宇宙エレベーターが未来を開く

宇宙エレベーターとは

人類は宇宙ロケットで、月、火星、木星や小惑星などにロボット探査機や国際宇宙ステーションに人を送り込んで研究を進めています。宇宙開発には夢があり、未来があります。
宇宙エレベーターは、地球から約36,000km上空にある静止衛星まで人や物を運ぶ夢の乗り物です。地球と宇宙をケーブルでつなぎ、電車に乗るように気軽に宇宙旅行ができるので、ロケットのような墜落の危険やスペースデブリ(宇宙ごみ)の心配もありません。宇宙エレベーターとはどんなものなのか、探ってみましょう。
まずは、青木義男教授(日本大学 副学長)の解説YouTubeを視聴してみましょう。

宇宙エレベーター構想

宇宙エレベーターの概念は、1895年にロシアの科学者であるコンスタンタン・ツィロコフスキー(Konstantin Tsiolkovsky)によって考案され、1979 年にSF 作家のアーサー・C・クラークが発表した小説「楽園の泉」の中で登場し、宇宙エレベーターという言葉を広く一般の人たちに知らしめられました。
しかし、問題となったのは宇宙ステーションから地上まで結ぶテザー(ひも)でした。地上にテザーを垂らすとテザー自体の重さから宇宙ステーションが重力で引っ張られ墜落してしまうため、その反対側にも伸ばす必要があり、テザーは約100,000kmの長さになります。これだけの構造に耐えられるテザーが存在しなかったため、夢物語の域を脱しませんでした。

Arthur C. Clarke [Public domain]

カーボンナノチューブの発見

その後、1991 年に飯島澄男教授らによってカーボンナノチューブが発見されました。カーボンナノチューブとは、炭素(カーボン)とナノメートル(nm)と円筒(チューブ)の3つの言葉を合わせたもので、炭素原子が網目のように結びついており、ダイヤモンドと同じ程の硬さをもち、直径1cmで1,200tを吊り上げられると言われています。このように軽くて強靱なカーボンナノチューブによって、宇宙エレベーターは、実現可能な研究プロジェクトとして動き始め、 大手建設会社の大林組から「2050年宇宙エレベーター建設構想」が発表されました。
まさに宇宙エレベーターは、世界に先駆けて日本がリードしている壮大な宇宙開発プロジェクトなのです。2015年には国際宇宙ステーション(ISS)でカーボンナノチューブの宇宙実験が始まりいよいよ開発段階に入っています。

カーボンナノチューブの原子構造

宇宙エレベーターの構造

地面に落ちずに上空を飛び続けるには、早く移動する必要があります。例えばボールをゆっくり投げるとすぐに地面に落ちますが、もっと速くボールを投げると落ちる場所が遠くになります。もっともっと早く投げると、地球は丸いからどこまでも地面につかず、地球を1周してしまいます。秒速11.2kmを超えると、ボールは地球から離れて宇宙空間に飛んで行きます。
地球上空を飛んでいる気象衛星(ひまわり)や放送衛星(BS,CS)などの人工衛星は、高速で地球の周りを回っていますが、重力で引っ張られる力と地球の周りから外に飛び出そうとする遠心力とのちょうど釣り合うところ、つまり静止軌道という赤道上36000km 上空の軌道を回っています。これらは静止衛星と呼ばれ、36000km 上空を地球の自転と同じ速度で移動するため、地上から見ると、あたかも天空の一点に止まっているように見えるのです。
宇宙エレベーターは、静止軌道上にある宇宙ステーションからテザー(ひも)を垂らすことによって、宇宙基地と地上を結び、テザーを伝ってクライマー(カゴ)を上下させる乗り物です。時速200kmでクライマーを走行すれば、18日間で宇宙ステーションに到着します。ロケットよりも格段に多くの物資や人を宇宙に輸送でき、墜落の危険もなく、スペースデブリ(宇宙ごみ)や汚染も少ない宇宙エレベーター構想は、スペースコロニーや火星移住などの宇宙開発計画を一気に加速させる可能性を秘めているのです。

宇宙エレベーター動画集

YouTubeにはたくさんの宇宙エレベーター動画があります。英語による解説のものもありますが、動画とてもわかりやすいのでぜひ視聴してみて下さい。

宇宙エレベーターを作ってみよう

この壮大な夢の実現には、世界中の人たちが力を合わせ、新しいアイデアや技術を駆使し、問題解決を計って行かなければなりません。その担い手は、何といっても子どもたちです。子どもたちが宇宙エレベーターという夢の乗り物に憧れ、興味を持って携わって行くことが大切なのです。そこで、2013年に中学、高校、大学の教員有志が集まり、協力企業や団体の支援を受けながら実行委員会を編成しました。 レゴエデュケーションのマインドストームやSPIKEプライム(https://legoedu.jp/spikeprime/)を使って宇宙エレベーターを製作しながら、物資や人を運ぶときの問題点や安全について考える宇宙エレベーターロボット競技会を開催することになりました。

宇宙エレベーターロボット競技会は、小中高校生対象のロボット競技会です。未来の夢である宇宙エレベーターのロボットを製作します。出来るだけ軽量なロボットを製作し、アースポート(地上駅)から地上4mに設置された宇宙ステーション(円形の箱)に、物資(ピンポン球)を運んだり、宇宙ステーションの物資をアースポートまで安全に降ろし、そのポイントやタイムを競う競技です。また、ポスターセッションでは、製作した宇宙エレベーターロボットについて各チームが発表します。
この競技会には、子ども自らが主体的な学び、プログラミングしながら、チームで協力しながら問題解決する力、そして製作したロボットについて自分たちの考えを発表する力など、いま学校で子どもたちに身につけさせたい力の多くが盛り込まれています。